忍者ブログ

Flour Party

創作小説を載せています

[1]  [2]  [3]  [4]  [5]  [6

飴を舐めながら無邪気に笑う女の子はまだ可愛げがある。けれど、その頭を撫でながら笑う魔女は不気味そのものだ。私は音を立てないように後ずさりした。

だいたい、魔力を蓄えるとは一体どういうことなのか。魔力は生まれたときからその絶対量は決まっている。他人のを吸い取って自分の魔力に変換するという能力もあるらしいけれど、それは一時的なもので、決して蓄えるという表現はしない。なら、今目の前で行われているのは一体……?

考え事をしながら後退していたら、大きな木の根につまずいて派手に後ろに倒れ込んでしまった。その音で魔女に気付かれてしまう。

「あら、逃げようとしたの? 無駄なことを。第一、この場から逃げ出せたとして、どうやってこの島から出るつもりなのかしら? あなたたちが乗ってきた船はもう粉々よ。それに、大切なお友達を見捨てて一人逃げるだなんて、なんて薄情な子なのかしら」

口を歪めて魔女が笑う。私は金縛りにあったかのようにピクリとも動けない。真っ白な霧が辺りを包み込んで、私の視界はゼロになる。

「かわいそうな子。お友達も助けられずに、森の中で人知れず死んじゃうのね。ああ、かわいそうかわいそう」

魔女の笑い声がすぐ近くで聞こえる。きっと私はあのナイフで切り刻まれて死んでしまうんだろう。嫌だ、こんなところで……

「助けて。誰か、助けて!」

「……うるさいなぁ、聞こえてるよ」

空を仰ぐと、霧の隙間に燻った赤色が見えた。

拍手[0回]

PR

銀色のナイフが光って、振り下ろされたそれは腕の隙間から心臓に突き刺さり、真っ赤な血がどばーっと……なんてグロテスクな展開にはならなかった。なかなか来ない刺激に恐る恐る目を開けると、あの女の子が魔女の腕に絡みついていた。目の前でナイフの刃先がきらりと光って、私は悲鳴を上げながら飛び退く。今すぐ逃げたいのに、腰が抜けて立ち上がれない。女の子は駄々を捏ねる様に魔女の腕を揺さぶった。

「ちょっとウインド、邪魔しちゃだめよ」

「やだやだー! お姉ちゃんちょうだいよー。今! 今欲しいのー!」

「もう、しょうがないなぁ。フラッシュには内緒よ? 本当はもっと間隔を開けないといけないんだからね」

「わーい! ファグお姉ちゃん大好きー」

今なら逃げられる。

魔女が女の子に気を取られている内にそっと後ずさりをした。

「ほら口開けて。はい、あーん」

「あーーーん」

 女の子はいかにも甘そうなピンク色の飴を頬張った。満面の笑みでほっぺを押さえている。魔女は女の子の頭を撫でながら優しく笑う。

「もっと強くなるのよ。もっともっと魔力を蓄えて、大きくなるのよ」

拍手[0回]

「“水鉄砲”!」

私は指を銃の形に構える。掛け声と共に、指先に溜まった水泡が勢いよく飛んでいく。しかし、真っ白な視界の向こうで、木が砕ける乾いた音しかしない。

「どこを狙っているのです? 私はこちらですよ」

後ろから魔女の笑い声が聞こえる。私は振り返りざまに、声のした方へ数発お見舞いする。また乾いた音が響いた。

「アハハ、お姉ちゃんヘッタクソぉ」

あの女の子の笑い声も響く。霧に視界を奪われ、もう伸ばした自分の腕さえ見えない。真っ赤な炎が脳裏をよぎって、小さく舌打ちをした。

「あらあらお嬢さん、もう終わり? 張り合いがありませんねぇ。ベラ様のお付きの方なら、もっと魔力を使いこなせてもいいでしょうに」

「お姉ちゃん、もっと遊んでよ。魔力使えるんでしょ? もっとおっきい技出してよ!」

呆れたような声と無邪気な声があっちこっちから聞こえて、頭の中でぐわんぐわんと反響する。思わず耳を塞いでうずくまった。ギュッと目をつぶって、首を左右に激しく振る。

冷たい霧が体に纏わりついて気持ち悪い。汗なのか水滴なのか分からないものが体中を伝う。不意に右手を掴まれた。私は思わず目を開ける。視界いっぱいに魔女の顔が広がっていて、甲高い悲鳴が空気を震わせた。

魔女の後ろで鈍く光る銀色の何かが見えた。私に向かって振り下ろされるそれを凝視しながら、ああ私死んだなぁ……なんてのんびりと思った。

拍手[0回]

「お姉ちゃん、こっちこっち」

「ちょっと待って。引っ張んないでよ」

青い髪のお姉ちゃんは腕を大きく振って、私の手を振りほどいた。私はムスッとして振り返った。

「なによ、遊んでくれるって言ったじゃん」

「言ってない言ってない! 一っ言も言ってない! あなたが勝手にそう思ってるだけでしょ。こんなところまで連れて来て……腕痛かったんだからね。どこよここ」

お姉ちゃんは腕をさすりながら周りを見回す。でも周りは木ばかりで、ため息をつきながら私の後ろを見た。

そこにはお城の入り口のおっきな扉がある。

「お姉ちゃん、お外で遊びたいの? でも中の方が明るいよ?」

「あなた、ここに住んでるの? 王族か何か?」

「おうぞく……? わかんない!」

笑って答えるとお姉ちゃんはまたため息をついた。

「ため息ついたらシアワセがにげちゃうんだよ」

「うるさい! 関係ないわよ! だいたい、あなたがいけないんでしょ」

「えー、なんでー?」

首をかしげながらきくと、お姉ちゃんは頭をクシャクシャとかき混ぜて、知らないわよ! と怒鳴った。

「うるさいのはお前だよ」

不意にお姉ちゃんの後ろから声がした。うっすらと霧が出てくる。

「あ! お姉ちゃん、おかえりー!」

私はファグお姉ちゃんに手を振った。

拍手[0回]

僕は大勢の人に町中を連れ回され、くたくたになって広場のベンチに腰かけていた。思わずため息が漏れる。最初こそ二十人以上もの人が僕の周りを囲っていたが、今はもう誰もいない。まるで僕に飽きてしまったかのように見向きもしなかった。
「ベラ……大丈夫かな? アクアさんも心配だなぁ」
「それがあんたのお友達の名前?」
「わっ!」
急に話しかけられ飛び上がった。目の前にあのお面の人が立っている。口元に手を持っていっているから、おそらく笑っているのだろう。僕は少し頬を膨らませた。
「何だ青年。気を悪くしたのなら謝ろうか? だが、そんなもの必要ないだろ? 怒るな怒るな。笑えよ、青年」
「いいです、笑いたくありません。僕、帰りたいんです。出口はどこですか?」
「何で帰りたいんだ? ここは人の創造する理想郷なんだぞ? ここにいれば誰もが笑っていられる。ホラ、見ろよ周りを。悲しんでいる奴がいるか?」
僕は広場にいる人々の顔を流すように見て、首を左右に振った。
「じゃあ、苦しんでいる奴は? 憂いている奴は?」
首を横に振ることしかできない。
「無表情の奴は? いないだろ? なぜなら、ここが桃源郷だからだ! すべての人が笑っている。これが人間の理想だ! 私たちはそれを実現できている! お前もただ笑っていられるというのに、なぜ帰りたがるんだ? 何が気に入らない?」
僕は俯いて唇を強く噛む。何だかよくわからないけれど、この人がすごく怖い。汗が垂れてきた
「ホラ、言ってみろ青年。ここはそうして日々進化しているのだ」
笑った般若の顔が近づく。
怖い。怖い。怖い。怖いよ、ベラ……僕を助けて。

拍手[0回]

次のページ

HN:
傘屋
性別:
女性
職業:
学生
趣味:
読書・ゲーム
P R

忍者ブログ [PR]
template by repe