Flour Party
創作小説を載せています
パシャリ
気持ちいい音がして、デジカメの液晶に撮った写真が映し出される。真っ青な、雲一つない秋空。カメラには何枚でも青い空が入っている。全くの虚無でいて、どこまでも壮大な空がそこにはあった。
日が少しずつ傾いて、私の大好きな青色に赤みがかかってきた。
「そう言えば、ついこの間この辺りで人が死んだんだって」
通りすがりに声が聞こえてきた。
「女の子が死んだやつでしょ? なんでも、秋空を撮ってて川に落ちちゃったらしいよ。カメラには真っ青な空ばかり入ってたんだって」
気持ちは分からなくもない。この空には、きっと誰もが吸い込まれる。最も、死んでしまっては意味もないが。
再び覗いたレンズには、真っ青な空が広がっていた。
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お読み下さりありがとうございました!
「私」の解釈はご想像にお任せします(^^♪
♪うさぎ うさぎ 何見て跳ねる?――
私は満月が好きよ。
そう、あいつは言った。俺はただ何も答えなかった。今ならはっきり言える。大嫌いだと。全てを照らす明かりは眩しすぎて、全てを見透かす鋭さを秘めていて、あいつの金色の瞳を思い出して腹立たしい。
満月のようなあいつを前に心踊らしていた俺は、とても愚かで浅はかな兎だった。俺に出会わなければ、あいつの瞳を見れなくなることもなかった。遠くで見ているだけで満足だったのに、近付きたい、手に入れたいと欲をかいた俺のせいだ。
俺はまだ、昔のように満月を仰ぐことができない。その隣にいないキミを思い出してしまうから。
俺はゆっくりと月に背を向けた。
――十五夜お月様見て跳ねる♪
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お読み下さりありがとうございました!
「夜」というお題でしたが、これって夜ですかねぇ(笑)
夏の暑い夜、田舎の一角で私は踊る。今夜は世に言う盆踊りだ。夏祭りより大好きな夏の一大イベント。朝顔の浴衣を着て、汗だくになりながら回る。隣では、おじいちゃんが同じように汗にまみれて笑っている。
「よぉいやなあ、よぉいやなあ」
歌の間にある掛け声を叫ぶ。同じ動きを何度も繰り返す、この『口説き』という踊りが、どんな踊りよりも好きだ。お姉ちゃんはくだらないと言う。汗をかきたくないから。なのにちゃっかりジュースは貰っていく。そんなお姉ちゃんのことも忘れて、嫌なことすべてを忘れて、今は何も考えずに踊ればいい。夜は更けていく。
「来年も来るね」
別れ際にそう言うと、まだ負けやせんきにゃあ、とおじいちゃんは笑った。
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お読み下さりありがとうございました!
「まだ負けんきにゃあ」は土佐弁でして、「まだ負けないからな」という意味です。