Flour Party
創作小説を載せています
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霧はどんどん濃くなっていき、辺りが真っ白に包み込まれた。目の前にいるベラさんの姿が次第に霞んでいく。私は慌てて近寄り、風ではためくベラさんのマントを掴んだ。ベラさんがゆっくりと振り返る。
「つかむなよ。動きづらいだろうが」
「そ、そんなこと言わないでくださいよ。すぐ目の前も見えないくらい霧が深いんですから」
ベラさんは呆れたようにため息を吐き、がしがしと頭を掻いた。赤い髪がひらひらと揺れる。
「この霧を吹き飛ばすから、少し離れてろ。ケガするぞ」
不愛想にそう言われ、私は慌てて手を離した。数歩下がっただけで、たちまちベラさんの姿が見えなくなる。不安になって自分の手をギュッと握った。霧の中からバサバサと鈍く羽ばたく音が聞こえ、次第に霧が薄くなっていく。すぐにベラさんの赤い髪が見えてきた。
「ベラさん!」
私はベラさんの流れる髪を一房掴んだ。ベラさんは鬱陶しそうに頭を振る。髪は私の手からするりと離れた。
「つかむなって言ってるじゃないか。いい加減にしないとぶっ飛ばすぞ」
「怖いこと言わないでくださいよ」
「冗談だよ。何本気にしてるんだか」
ベラさんは呆れたように言ったが、彼女なら本気でやりかねなくて私は苦笑いを浮かべた。
「そんなことよりも、敵のお出ましだぜ」
ベラさんの言葉に道の先を見ると、霧が晴れたそこに、長い黒髪の女の人が立っていた。ベラさんはなぜか楽しそうにニタリと笑った。
「やっぱり魔女だったか。しかも、よりによってお前とはな」
「お久しぶりでございます。今は……ベラ様と呼んだ方がよろしいのですかねぇ?」