Flour Party
創作小説を載せています
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アルさんが消えてしまったせいで買い物には行けず、私たちは一日中宿屋の部屋にいた。特に話もせず、私は椅子に座ってずっとアルさんのことを考えていた。ベラさんはフワフワと浮かびながら窓から外を眺めていた。
日が沈むであろうころ、ベラさんが独り言のように話し出した。
「悪魔とは、魔族の中で一番低いくらいにいる一族だ。魔物族のように力があるわけでもなく、魔女族のように魔力がずば抜けて高いわけでもない。どっちもそこそこなのが悪魔族だ」
「地位がどうしたんですか? そんなの関係ないじゃないですか。現に悪魔は人を食らってるわけですし……」
私がそう言うと、ベラさんは大きなため息をついた。首を左右に振りながら、お前はバカだなと呟く。
「悪魔たちは魔物みたいにむやみに人を殺したりしない、人徳があるやつらだ。それに、本当に食われているところを誰も見たことがないのも変な話だろ? こんなに手の込んだことをするだなんて、相当頭がキレるぞ」
「でも、だからどうなんですか?」
ベラさんが振り返って私を見た。赤とも黄色とも言えない彼女の瞳が妖艶に光る。一瞬寒気を覚えた。しばらくの間私はその瞳に魅入られていた。ベラさんが窓の外をチラッと見て、出口に向かって飛んでいく。私は慌てて椅子から降りた。
「どこへ行くんですか?」
「外だよ。霧が出てきた」
まさかと思って外を見ると、暗い道の奥から白い霧が流れてきている。振り返るとベラさんがいなかった。急いで下に降り外に出る。玄関を開けた先でベラさんは道の先を睨んでいた。私が話しかける前にベラさんが嬉しそうに言った。
「ほぅら。霧の悪魔がやってきたぜ」