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Flour Party

創作小説を載せています

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 数時間空を飛び、ボクはアルがいた島に戻って来た。着いた頃にはすっかり日が暮れていて、街灯の明かりしか点いていなかった。もっとも、そっちの方が姿を見られず好都合なのだが。

「こんな大金を捨てて来いだなんて、アイツはイヤな奴だ。海兵志願者には、やっぱりロクな奴がいない」

 そんなことをブツブツとつぶやきながらあのお屋敷があった山へ行くと、なにやら話し声が聞こえてきた。ボクは慌てて木の陰に隠れる。

「それで? そいつは確かに、赤い髪の女だったんだな?」

「は、はい。間違いありません」

 そっと顔を出して様子をうかがうと、壊れた屋敷のガレキの中で、ボクが倒したあの魔物が誰かと話していた。相手は魔物の陰になって見えないが、きっとヤツだと確信した。

「それで、貴様はみすみすその女を取り逃がしたと言うんだな?」

「ええ、まあ……ちょっと油断しまして。次こそは必ず!」

「……次?」

ヤツが剣を振り上げた。途端に、雲一つない空から雷が降ってくる。雷は魔物を直撃した。その大きな音に、ボクは耳をふさいでうずくまりながら、小さく悲鳴を上げた。魔物は真っ黒になって倒れた。

「俺の世界に次などねぇ。一度来たチャンスをモノにできねぇ奴はいらねぇんだよ」

 ボクはその場に金の袋を置いて、すぐにその場を立ち去ろうとした。飛び立った瞬間、雷が当たり周りの木がすべて倒れた。思わず振り返ったボクはヤツと目が合った。

「言っただろう? 一度来たチャンスをモノにできねぇ奴はいらねぇと。裏を返せば、俺は必ずチャンスを逃さねぇ。てめぇが俺の前に姿を現すなんざ、そうそうねぇチャンスだと思わねぇか?」

「おあいにく、ボクは好きでオメェの前に現れたワケじゃない」

「てめぇの動機なんざ関係ねぇ。ここで会ったが百年目! 今度こそひっ捕らえてやる!」

 辺り一帯に雷が降り注いだ。

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パンドラの箱 第十六話「“雷柱”」 HOME パンドラの箱 第十四話「霧の島」

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