Flour Party
創作小説を載せています
[34] [33] [32] [31] [30] [29] [28] [27] [26] [25] [24]
振り返えると、目の前にベラがいた。
「な、なぜだ! 確実に撃ち落としたはず!」
「フンッ! 言っただろう? ボクはオメェなんかに捕まったりはしない」
風が吹いて、ベラの赤い髪が揺れた。俺は剣でその体を貫いた。雷が効かなくても、物理攻撃なら効くだろう。だが、手応えがない。俺は目を見開いた。ベラの姿が、陽炎の様にゆらゆらと揺らめく。ゆらめいた顔で、ベラがニヤリと笑った。
「“蜃気楼”」
「馬鹿な! こんな至近距離で蜃気楼だと!?」
「蜃気楼とは……」
揺らめいていたベラは完全に消え、代わりに頭上で声がする。見上げると、そこにベラがいた。真っ白な羽を羽ばたかせて飛んでいる。
「激しい気温差で生まれる幻。ボクの魔力を持ってすれば、気温差を作るなんてカンタンだ」
俺は黙ったまま、剣を突き上げた。剣先からベラに向かって雷が飛んでいく。その雷は、確実にベラの脳天を貫いた。しかし、そのベラの姿もまた揺らめいて消える。
「オメェなんかに、ボクを捕まえることはできないさ」
真後ろで声がする。振り向きながら剣を振るった。また消える。もう声は聞こえなくなった。空にも地上にも奴の姿は見えない。
「チッ! また逃げられたか。まさかあんな手が残っていたとは……これは、俺の方も作戦を練って挑まねぇと、そうやすやすとは捕まえられねぇな」
風が吹いて、赤い髪が揺れた。