Flour Party
創作小説を載せています
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ベラが飛び立ったあと、僕らは浜に船を着けた。相変わらず空は夜のように真っ暗で、不気味なことこの上ない。僕はアクアの服の袖をギュッと握った。
「なんですか? 歩きにくいので離れてください」
「そ、そんな冷たいこと言わないで下さいよ。怖いんですから」
僕を引き剥がそうとするアクアと、離れまいとする僕。二人でバタバタとしていると、ジャリッと誰かが砂を踏む音がした。動きを止めてそっちを向くと、杖をついたご老人と小さな男の子がいた。
「あ、あの。僕らは怪しい者じゃなくて……」
「よくぞ来てくれました。歓迎いたしましょう、旅のお方」
ご老人はニッコリと笑って言った。子供はなぜか寂しそうに僕らを見ている。ご老人は僕の手を取って歩き出した。置いてきぼりにされたアクアは、ちょっとー! と文句を言いながらついてくる。
「ご、ご老人。手を引かれたままだと歩きにくいので……」
「ああ、これはすみません。旅の方なんてそうそう来ませんもので……ようこそ歓迎の島へ! 丁重におもてなしいたしますよ。たとえ、あなた様のように変わった服をお召しの方でもね」
ご老人はしわくちゃの顔をほころばせた。僕は苦笑いを浮かべる。そのとき、子供がそっと僕の袖を引いた。手で屈むように促す。僕がしゃがむと、子供は小さな声で耳打ちをした。
「すぐに逃げて。ここは悪魔の島。男の人はみんな食べられちゃう」