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Flour Party

創作小説を載せています

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    目の前で船を漕いでいる少女はアクアと名乗った。僕たちが正体を明かす前に、彼女はベラを指さして、神の使徒、と短く言った。ベラが顔をしかめる。僕はアクアとは反対の船の端まで飛び退いた。彼女が怪訝そうに、なぜ知ってる、と聞いた。
「遠くから見ちゃったんです。あなたの背中に翼が生えていたところ。私、神族について調べてるんです。だからもしかしてと思って」
   そう言って彼女はウインクした。ベラは警戒心を露わにして、半ば怒ったような声で言った。
「なぜ使徒の存在を知っている? 普通の人の手に入るようなものに、使徒のことは書かれてないはずだ。お前は何者だ!」
「そんなに怖い顔をしないでください。私の産まれた島にはあったんですよ。使徒について詳しく書かれた本が」
   僕は神族や使徒のことについては全く知らないから、その本僕も読みたい、なんて空気を読まないことを言ってしまった。案の定、ベラがその恐ろしい顔を僕に向ける。僕はひっ! と縮み上がった。ベラは小さくため息をついて、またアクアの方を見た。あの顔を向けられて、ヘラヘラと笑っていられるアクアの図太さには感心する。しばらくの沈黙のあと、ベラが口を開いた。
「昔、ボクに、神族についてしつこく話を聞いてきた女がいた。たぶんその人が書いた本だと思うが・・・お前は幻獣族なのか?」
    ベラがそう聞くと、アクアは少し驚いた顔をしてそうですよ、と答えた。そして、漕いでいたオールから手を離したかと思うと、いきなり海に飛び込んだ。僕は慌てて海を覗くが、真っ青な彼女の髪は海の色と混じり、彼女の姿を見つけることはできない。しかし、すぐに近くからおーい、というアクアの声が聞こえてきた。僕らは声のした方を向く。
「きっと驚くから、見ててよ!」
    そう言って彼女はまた水中に消えた。そして、大きな魚が僕たちの乗っている船を飛び越えた。僕はすぐに、それが魚じゃないことに気付く。それは、ワンピースの下から魚のヒレを覗かせたアクアだった。

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パンドラの箱 第十話「ベラとアクア」 HOME パンドラの箱 第八話「神の使徒」

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