Flour Party
創作小説を載せています
[35] [34] [33] [32] [31] [30] [29] [28] [27] [26] [25]
島を離れてしばらくすると、あの分厚い雲が見えてきた。朝日が昇ったばかりなのに、あっという間に夜の様に暗くなった。海岸にあの小船が停留しているのが見えてくる。誰も乗っていないようだ。
「先に島に入ったか……」
誰に言うともなくつぶやいた。少し行くと小さな町があった。なぜかシンと静まり返っている。
「変だな? なんでこんなに人がいないんだ?」
しばらく飛び回っていると、道の真ん中で座り込んでいるアクアを見つけた。おーい! と大きな声で呼びかける。アクアがゆっくりと顔を上げた。
「ど、どうしたんだ!?」
アクアは泣いていた。ボクを見て、途切れ途切れになりながらも、ごめんなさいごめんなさい! と繰り返した。
「謝ってばっかじゃわかんないよ。一体何があったんだ? アルは一緒じゃないのか?」
「ごめんなさい! アルさんが悪魔に食べられちゃった!」
「はぁー!?」
ボクは大声で言った。ついついため息がもれる。
「食べられるところでも見たのか?」
「い、いや……」
「悪魔の姿は?」
アクアは静かに首を横に振った。
「ま、だろうな。悪魔族は別に、人間を取って食うような凶暴なヤツじゃない。きっと何かの間違いさ」
「間違いなんかじゃないよ!」
どこからか現れた小僧が叫んだ。この島の人だろうか。子供はなぜか必死に泣き叫んだ。
「みんな霧に飲み込まれて消えちゃったんだ! 僕のお父さんもお母さんも、島で一番強いお兄ちゃんだって!」
ボクは大きなため息を一つ吐いた。