ヤツは楽しそうに笑った。ボクはその笑い声が不愉快でたまらない。アクアが服の端を握っているのも気にならないほどに。
「お前なんかとこんなところで会うとはな」
「私もですよ。そもそも、あなた様はてっきり死んだものと思っていました」
「世間ではそうなってるだろうな。アイツの権限で」
「まあ! リューイ様をアイツ呼ばわりとは。あなた様も随分とお偉くなられたのですね」
彼女の表情が少し曇り、手から白いもやがにじみ出る。ボクは服をつかんでいるアクアの手を握った。アクアが驚いているのが振り返らなくても分かる。そのままグッと引き寄せた。
「飛ぶぞ。絶対に手を離すなよ」
その言葉を合図に、ボクは空高く舞い上がった。アクアは手を離すまいと強く抱きかかえている。落ちないように腰に足を添えてあげた。バランスが取れたアクアは、ギュッとつむっていた目を開けて下を見た。下では、魔女が高笑いをしていた。
「そんなところに逃げたからって何になるの? 私の霧はすべてを包み込み、隠してしまえるのよ!」
彼女の手から放たれた霧があっという間に広まっていく。アクアが怯えて、ボクの手をさらに強く握った。たちまち辺りは真っ白になる。ボクは小さくため息をついて、スッと右手を突き出した。
Flour Party
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