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Flour Party

創作小説を載せています

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    結局朝食の時間には間に合わず、奥様の大目玉を食らった僕は、今日一日何でも言うことを聞くという条件で許してもらえた。僕はいつも使用人の中でもよく命令されるから、特に変わった風にはならなかったことは幸いだと思う。
日が傾き始めた頃、奥様が大きな声で僕を呼んだ。かなり慌てた声に少しおびえながら、僕は奥様の前に跪いた。
「お呼びでしょうか」
   すると奥様は、大広間の階段の上から僕を指差し、大きな声で言った。
「パンが食べたいわ! 今まで食べたことがない、甘くておいしいパンよ。今日の夕食はそれに変更よ!」
    僕は心の中で大きなため息を吐きながら、いつものわがままに黙って従う。すぐに山を下りた。
急いだものの、街に着いた頃にはすっかり日が暮れてしまい、ほとんどの店は閉まっていた。パン屋どころか飲み屋程度しか開いていない。見つかる訳ないとぼやきながらも、奥様の命には逆らえないので、僕は行くあてもなく夜の街をうろついた。
   ふと時計台を見上げたときには、すでに夕食の時間を一時間以上も過ぎていた。カンカンに怒っている奥様を想像して身震いする。パンは諦めてもらって、すぐにでも大好きなグラタンを作って差し上げよう。僕はくるりと踵を返し、来た道を屋敷へ向かって走り出した。
    山の麓の屋敷へ続く階段の前で立ち止まり、荒くなった呼吸を整える。階段のてっぺんを見上げて僕はおかしなことに気付いた。いつもなら頂上に屋敷の明かりがぼんやりと見えるはずなのに、今は真っ暗で何も見えない。ふてくされて寝てしまったのだろうか。ならば、なおさら早く帰って謝らなければ。階段に足をかけたとき、不意に後ろから肩に手が置かれた。臆病な性格の僕は大きく肩を震わせ、ビクビクしながらもゆっくりと振り返った。

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パンドラの箱 第三話「闇夜の訪問者」 HOME パンドラの箱 第一話「変わらない日常」

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